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魔族の男と帝国の姫
大陸を南北に分かつ形で、人間と魔族、それぞれの国がある。
両種の抗争は根深く、和平交渉は常に決裂してきた。いまさらどうなることでもないと思っていたが、今回は本腰を入れているらしい。
期間中、双方から選ばれた人物をひとつの場所へ置き、共に過ごすことが決定した。
要するに、人質だ。
互いを互いの捕虜とすることで、牽制している。
魔族代表として選出されたザカートは、王家に近しい三公家の嫡男である。
知力、武力ともに抜きんでた才を持ち、次代のゼシュタル国を担うに必要不可欠とされている、若いながらも国にとって重要な男だ。
対する人間側は、現皇帝の孫娘であるアナスタシア。白磁の肌に、絹糸のような美しい金色の髪を持つ姫。
身体が弱く、表立った仕事をしていない秘蔵っ子を取引に出すことで、誠意を表しているのだろう。
彼女に会うまで、ザカートはそう思っていた。
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