石のお姫様

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 白の艶めく胡蝶蘭は、背筋をピンとして凛と礼儀正しく前を向いている。 「そうです。あなたがその部下を追い詰めてやめさせたんです、多分」  ふいに言葉が口をついて出た。 「え?」  怜の言葉に彼は顔をあげる。 「……わからないですけど。でも、後悔するべきじゃないです。一度口にした言葉はもう、二度と元には戻らないんですから。どんなに悔やんだって引っ込めることはできないんです」  言葉が溢れ出てきて、一気に吐き出してみる。小刻みに震えながら、右手をぎゅっと握りしめる。止まらない。 「だけど、今間違いだったかもしれないと思っていることが、この先もずっと、間違いだとは限らないと思うんです。それが正解だったと思える日がきっときます、あなたにも、そのやめた彼にも。本当のことは、あなたが責めたせいで彼がやめたってことじゃないんじゃないですか。あなたはそうやって、色んなことに苦しんで頑張ってきた。だから、そのポジションにつく価値がある人間だってことじゃないんですか」  彼は黙り込んでいる。  何も言わないほうがいい、黙っていようと思ったのにどうして言ってしまったんだろう。  怜はハッとしてうつむく。 「すみません。わたし、言わなくてもいいこと言いました……悪い癖なんです。母にも何度も注意されて、もう誰かに自分の言葉を向けるのやめようって思ってたんです。そうやってしてきたのに、わたし」
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