石のお姫様

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 ――あなたの言葉には毒があるの。  ――そうやってね、自分の思うことをそのまま言っていいのは、それでも周りがついてきてくれるくらい特別な才能を持った人じゃないとダメなの。怜が言ったことで、相手が傷ついているのがわからない?  ダメだ、黙っていればよかったのに。 「『石のお姫様』って童話を知ってる?」  彼は静かに問うた。  昔むかしあるところに、可憐で美しいお花のお姫様がいました。お花のお姫様は森の昆虫や動物たちと仲良くなりたくて、キラキラと眩しい太陽の下で、たくさんの美しい花びらを重ねました。  昆虫や動物たちはかわいらしいお姫様の元へやってきますが、やがて恐ろしい様子で逃げていきました。その根や花びらには毒があったのです。  お花のお姫様は、花を咲かせなくなりました。自分には毒があるとわかっていたからです。そうして石ころになりたいと願いました。愛でられ触れられ、自分の元へやってくるものを傷つけてしまうよりも、誰も気にも止めない、道端の固くて冷たい石ころになったほうがマシだと思ったからです。  でも石ころになることはできず、やがて枯れ果てました。
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