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幸奈が答えると、文子は娘を睨んできた。
「何を言うんです。あの人の財産を減らすつもり?
親不孝な娘を持って、本当に悲しいわ」
恨みがましく言ってきても、幸奈の気持ちは変わらない。
「ママ。
桐生さんが、社長になりたいって言ってきたらどうするの?
それに裁判したら、ママ以外の女性との間に子供がいたって知られるよ。パパが可哀想」
幸奈も分かっている。小山不動産の社長に隠し子がいるのは有名だろうと。
婚約破棄をしたのだ。隠しきれたとは思えない。それでも、かなり昔のことだ。幸奈が知らないくらいだから、みんなも普段は忘れているはず。
でも、裁判になれば、また噂になる。それが怖かった。
娘の言葉が正しいと理解できたようで、文子は泣きだしたけど反対はしなかった。
「すいません。こちらの希望を持っていってもらえますか」
彼は、幸奈たちを揺さぶってきている。株を渡したくないなら、要求を認めろと。それなら、亮平が提案を受ける可能性は強いと思った。
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