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9 兄と妹
「お久しぶりです」
挨拶すると、相手は笑顔もなく頷いた。
「ああ。言われたとおり来たぞ」
遺産相続問題は、本当にすぐに解決した。遺留分を現金で支払うという幸奈たちの申し出を、亮平は受けた。
相続の合意に関する書類は、小山家の顧問弁護士の事務所で署名捺印した。なので、二人が会う必要はなくなった。
でも、幸奈は亮平にもう一度会いたいと、弁護士経由で頼み、彼は了承してくれた。
「母が失礼な態度で、本当に申し訳ありませんでした」
頭を下げる幸奈に、彼は意表を突かれたように黙った。
「……俺のこと、家を引っ掻き回した邪魔者って思わないのか?」
彼の横に座る弁護士も同じ考えのようで、幸奈を見てきた。
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