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幸奈は一人っ子だから、妹という存在が想像できない。でも、自分の子供を邪魔にする気持ちはもっと分からない。
不思議だった、名門高校に通いながらアルバイトをする理由が、やっと分かった。彼が揺さぶりを掛けてきた理由も。
幸奈たちにも一番の解決法だったから、苛立たなかった。
「それじゃ、今は」
確認すると亮平は頷いた。
「母親と妹の三人暮らしだ。
高校出てすぐ働いたんだけど、俺と母親だけじゃ、妹を大学に行かせるのは無理でさ。
そんな時、小山不動産の社長が死んだって聞いて。一応父親だから行ったんだけど、豪華な葬儀見たら腹立って。
こいつに相談したら、遺言書公開の時に行くぞって」
横の男性が頷いた。亮平は名門高校の出身。友人に弁護士がいて当然だ。
「母親には内緒だったから後で怒られたよ。金を返せとは言わなかったけど。
あんたも怒って当然と思ってる」
「幸奈。私の名前は幸奈。あんたはやめて。呼び捨てでいいから」
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