9 兄と妹

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 幸奈は一人っ子だから、妹という存在が想像できない。でも、自分の子供を邪魔にする気持ちはもっと分からない。  不思議だった、名門高校に通いながらアルバイトをする理由が、やっと分かった。彼が揺さぶりを掛けてきた理由も。  幸奈たちにも一番の解決法だったから、苛立(いらだ)たなかった。  「それじゃ、今は」  確認すると亮平は(うなづ)いた。  「母親と妹の三人暮らしだ。  高校出てすぐ働いたんだけど、俺と母親だけじゃ、妹を大学に行かせるのは無理でさ。  そんな時、小山不動産の社長が死んだって聞いて。一応父親だから行ったんだけど、豪華な葬儀見たら腹立って。  こいつに相談したら、遺言書公開の時に行くぞって」  横の男性が(うなづ)いた。亮平は名門高校の出身。友人に弁護士がいて当然だ。  「母親には内緒だったから後で怒られたよ。金を返せとは言わなかったけど。  あんたも怒って当然と思ってる」  「幸奈。私の名前は幸奈。あんたはやめて。呼び捨てでいいから」
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