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「どうしたの?」
彼女は視線で夫に説明した。視線の先には……
「あの人、幸奈の……」
夫も、あの時、あの場所にいた。
「うん。元気そうだね。良かった」
亮平が、女性二人と歩いていた。母親と妹だろう。二人とも亮平と似ている。
笑顔の彼を見る幸奈の瞳が潤んだ。
彼の姿がぼやけていく。夫に肩を抱かれながら、幸奈は兄に、心の中でそっと呼びかけた。
(お兄さん、幸せそうで良かった。私、子供が出来たの。お兄さんみたいな人になるように育てるね)
もう、会話を交わすことはないけど、幸奈は、二分の一の兄の幸せを祈っていた。
おわり
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