0人が本棚に入れています
本棚に追加
本文
ピピピピピ
何かが聞こえる。うるさいな。この音を鳴らしている本体を止めなきゃ。
あたたかい布にくるまれている私は右手をスッと伸ばし、これを止めようとした。
しかし
一瞬で私の指は痛くなった。いや、正確には、キンキンに冷えているのにも関わらず、氷をさらにたくさん入れた水に手を入れたぐらい、手が冷たくなり、さらに、急な冷えだったため、指が固まってしまったのだ。
急いで私は右手を引っ込める。ぬくぬくな布団の中に冷たいものが腰当たりに来る。
ああ、天国だ。ずっとこのままでいたい。寝ていたい。
だが、あの地獄のような音が私を現実の世界に引きずり込もうとする。さらに、温かい世界の外は極寒な所だからなおさらだ。
ずっと鳴っている物を見る。鳴り始めから10分過ぎている。そして、時計に書いてある今日の日付を確認する。
んー。今日は25日か。25日は…。
壁に貼っているカレンダーを見ると…。
暖かな空間にヒヤッとした感覚が突き抜けた。
へ、平日…。つまり、仕事の日…。朝ごはん抜きにしない限り遅刻確定じゃん…。
けど、寒い…仕事行きたくない…。
だけど、遅刻は絶対したくない。早く出なきゃ。この、リスクが伴う天国に。
エイっと手を伸ばし、目覚まし時計を止める。そして、ぶわっと布団をめくり、起き上がる。
さて、この辛い場所に立ち向かおう。そして、夜は、再び楽園に戻ろう。
最初のコメントを投稿しよう!