織田くん

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 織田くんは中学に上がると、時々帰り道に小学校までやってきて、その時には放課後保健室の先生と少し話してから帰る私のところにやってきては、中学がどんなところか教えてくれた。萌も中学に入ったらスカート嫌だと言ってられないなと笑って。  六年生になった私は、正直もう男の子の格好をする理由もないし、中学に行ったら髪を伸ばしてセーラー服を着ることを楽しみにしていた。織田くんにも、女の子らしいところを見てもらえるかなって。  けれどある日織田くんは、いつもみたいに小学校に遊びにきてくれた時に、とても嬉しそうに私のところまできて、興奮気味に報告してきた。 「萌、聞いて聞いて!俺彼女できた!」  とっても嬉しそうに、織田くんは笑った。私はその瞬間中学に通う楽しみが半分以上なくなったというのに、満面の笑みで、幸せそうだった。  中学校に上がると、ひとつ学年が違うだけでなかなか会えないんだということも知った。なんとか接点を持とうと思ったけれど、織田くんの隣にはいつも友達がいて、そうじゃないと思ったら彼女がいて、話す機会も少なかった。  ずいぶん遠い存在になっちゃったなあと思った。
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