織田くん

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織田くん

 片想いが叶わなかったのは、これまでの人生で三人。  小学校の時に好きだった織田くんは、私が五年生の時に六年生だったひとつ上の男の子。笑顔になると目元に皺が寄る人で、白い歯を見せてニッと笑う人で、太陽みたいで好きだった。私はその頃男の子みたいに髪を短くして、スカートは履かなくて、男の子に混じってサッカーばかりしていたから、織田くんは私を他の男の子と同じように、ひとつ下の弟分として扱っていた。  女の子の格好は好きじゃなかったけれど、私の心はちゃんと女の子で、織田くんが大好きだった。けれど小学校五年生や六年生というのは、早い子だともう付き合っていたり、好きな人のことで牽制したりする女同士の戦いが始まっていて、私はそれに巻き込まれるのが嫌で、好きじゃないフリを一生懸命していた。織田くんも、女子の中では私といちばん仲がいいと言って、特別扱いしてくれた。もちろん女の子としてではなく、男友達のポジションで。  そんなだから当然、他の女の子がバレンタインに好きな男の子にチョコを作って渡す時に混ざる事はできなかった。
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