第一節 海の中の島 その2

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第一節 海の中の島 その2

  夕刻の太陽が西の海に向かってかなり傾いてきた頃───走砂艇ドマーロの甲板には船に乗るもの全員が集まってきていた───  そして、その中には黒番犬の船[ブラック・ラフト]の生き残り───レンゴンと、黒番犬こと兄ケルーベを失った少女ケルガの姿もあった───彼らは、すでに反乱の意思無しと判断されて自由に船内を歩き回ることができたのであるが・・・確かに、この二人では反乱を起こすことはできないだろう・・・  夕暮れでやや赤みを帯びてきた海面に、サンゴ礁に覆われたテニスコート程度の広さの岩礁が水面から2mほどの高さまで突き出していた───どうやら、それが黄金の塔ブベールがあると言われる島の頂上のようであったが・・・とても塔のようには見えなかった・・・  そんな岩礁の島をケルガは虚ろな目で見つめていた───が、自分の隣にブルアン少年が来たことに気が付くと驚いたことに自分から声をかけてきた。 「ブルアン・・・アンタ、年はいくつ?」  昨日の夜まで膝を抱えてうつむき、嗚咽をこらえていた彼女の様子を見ていたブルアンにとっては、ちょっと意外なことであった。 「あ、うん、十三歳・・・もうすぐ十四歳だけどね?」 「そう・・・アタシは十六歳・・・三歳も年下なんだ・・・意外と勇気があるんだね・・・」  ブルアンは彼女が[フレイング・デッチマン号]で彼女を縛って十字架に架けていたロープを、彼の鋭い前歯で切って彼女を助けたことを言っているのだろうと思い─── 「僕も無我夢中だったんだ・・・ケルガさん・・・お兄さんは・・・最後まで戦って、勇敢だったと思うよ」  ブルアンの言葉にケルガは「フンッ」とわずかに鼻を鳴らしてブルアンから顔を反らすと─── 「・・・馬鹿なアニキさ・・・早く逃げればよかったンだよ・・・」 「でも、ケルーベさんのお陰で、あのスライム女たちの攻撃から僕らが守られたんだと思うよ!」
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