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グリンドーはオレージナから受け取ったメスでアルネラの髪の毛をひと房切り取ると胸のポケットの中にしまい込む。
「グリンドー・・・」
オレージナがグリンドーの右手に触れながら話かけた。
「ああ・・・」
グリンドーは動かなくなったアルネラの頭部を優しくアメーバの体の上に置くと、オレージナとハグをした。
「オレージナ・・・」
「なに? グリンドー?」
「もし、オレが先に死んだら・・・今と同じように髪の毛をひと房だけ取っておいてくれないか?・・・あとのオレの体は、同じように荼毘に付して、灰を海に撒いて欲しい」
「わかったよ・・・グリンドー! それなら、アタシが先に死んでも同じようにしてよ!・・・でも・・・それまでは、アンタから離れないよ!」
「わかった・・・オレもオレージナのことは死ぬまで守るさ!」
二人はさらに強く抱き合った───そして、その直後、グリンドーはいきなり立ち上がり、信者の一人が持っていた重いライフルを右手一本で持ち、その銃口の先を転がっていたルチアン教祖の顎の下に押し当てた。
「ま、待て! グリンドー! 話合おうじゃないか!」
ルチアンは命乞いをした───が、グリンドーは冷たく言い放つ。
「オレは、かつて、恐れられていた海賊・・マン・クッカーと呼ばれていたよ・・・だが、人間を生きたまま荼毘に付すような残酷なことは・・・もうしねえよ!・・・だから、貴様はアルネラ母さんを長年苦しめた罰を受けろ!!!」
グリンドーが冷酷に引き金を引くと、ライフルは轟音とともにルチアンの脳髄をふきとばし、後頭部にポッカリと穴が開いたが、その恐怖の顔はそのまま綺麗に残った。
「アルネラ母さん!・・・仇はうったぜ!!」
***
グリンドー、オレージナの二人は協力して、ブラックラフト号の小型ホバークラフトにアルネラのアメーバ遺体と、ルチアンの屍を乗せると、急ぎブベール島に向かった。
そして、短時間だがホバークラフトの空中ホバリング機能を使って黒い円柱の上部まで飛び、白い水蒸気を盛んに上げている白い宇宙船の噴射口の近くに一人の遺体と一体の屍を置いて、急ぎ、またブラックラフトに戻ってきた。
「あの宇宙船が発射するときは、かなりの炎の噴射があるぞ! この船はできるだけ遠ざけたほうがいい! レンゴン! ブリッジはバラバラの状態だが・・・機関室だけで操作できるか?!」
パプラ船長がレンゴンに問いかける。
「アイ! まかしてくださいヨ!船長! 元はオレたちの船だったんスから!」
そう言い残すと、レンゴンは駆け足で船内に飛び込んでいった。
その間にも宇宙船はその底部の発射口から盛んに水蒸気を出していたが、ついにオレンジ色のジェットのような炎をいきなり吐き始めた。
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