エピローグ

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 さて、フェルト助役は今回の航海の途中から、やけに人造人間のヴェルデと一緒にいることが多かったのだが、結局、人造海豚のジェイクも家族兼ペットとして受け入れて、ヴェルデと結婚したのである。  なぜか?───実は、のちにフェルトがブラーウに語ったことであるが、フェルトは他の者と異なり、RAVV2051ウィルスによる外見の異常は全く無いのだが、彼の生殖細胞だけはことごとく化け物のDNAとなっていたのである───それゆえに、彼はふつうの女性との結婚を拒んでいた───そして、なんとも数奇な運命であるが、以前にフェルトがお付き合いしていた幼馴染の女性メナーディアが事故死したときに、彼女の遺言によって、その脳神経細胞を医療のために役立てることとなり、ある人造人間の脳にその完全複製が移植されたのである───それが、なんと、フェルトも知らなかったことであるが、その人造人間がヴェルデだったのである。  それゆえにヴェルデはときおり、フラッシュバックのように人間であったときのメナーディアの記憶がよみがえることがあり、それでフェルトもその事実に気づき、二人は急接近することとなったのである───  そして───グリンドーとオレージナは、航海の途中でケルーベの家族が居る或る半島に立ち寄って宝の分け前を渡すと同時に、ケルーベの勇敢な最後を語り、妹のケルガが、今、ブルアンとともに人類の未来を左右するミッションを遂行するために月に向かったことを告げた。  その後、船がボーリボード町の港についた後に、ブルアン少年の母親であるマリアーナ・イエーロに会い、ブルアンの状況を伝え、病弱なマリアーナに代わって、自分達二人がブルアンが帰るまで宿ポンペートの仕事を引き受けることを約束し、ブルアンの分の宝を渡したが、マリアーナは自分の妹のメリークとともに、ブルアンが帰るまではその宝は大事に取っておくことを決めたのであった。 ****** ******  そして───グリンドーとオレージナの二人は、ブルアン少年の自宅兼仕事場の宿ポンペートの食堂の椅子に座り、量子通信自動書記機がカタカタと音を立てて書く文字を見つめていた。   『グリンドーさん、オレージナさん、今、僕とケルガは月面の地下基地でアノパレルと呼ばれるハイパーフォトンAIコンピュータとRAVV2051ウィルスを完全中和するためのReverse2112ウィロイドの量産に取り掛かっています。そのためには、僕ら二人の体を製造工程の一部として毎日使わなければならないんですが・・・でも、僕らは辛いけれど頑張ります! 僕らの頑張りが人類の未来を救うのですから!!』                                                        The End  
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