ダンジョンの適正年齢低下による学舎の需要

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ダンジョンの適正年齢低下による学舎の需要

 私は元冒険者で、教師としてダンジョンアカデミーに就職した。教える生徒はなんと10歳未満のガキンチョ供。  ダンジョンがこの世界に出現してから既に数十年が経過。初めは戸惑い、地上に溢れ出した魔物に恐怖した。しかし、人は慣れるもの。  今では冒険者が憧れの職業となり、小学生の夢はバトルチューバー(戦闘動画配信者)が大多数となっていた。  それも全てはダンジョンからもたらされる副産物に有った。レベルアップによる身体能力の向上、更には魔物が落とす魔力が宿る結晶。  これ等がもたらしたものは人類の進化。そして魔法の行使、ファンタジーの世界にしか存在しなかった未知なる力が発揮出来るようになったのだ。  人類の進化は子孫にも受け継がれた。産まれた子供は初めから身体能力が高く、又稀に魔力を宿す子迄現れた。  最初の頃は成人した大人だけがダンジョンに入る事をゆるされていたが、今では何と教師の引率があれば小学生でも入れてしまう迄になっていた。  その為、中二病ならぬ中二冒険者が現れ出して、モラルの低下処かマナーを守る者が損をする混沌が生まれてしまった。  それを防ぐべく設立されたのが、ダンジョンアカデミーだ。小学生と中学生の一環校で、卒業後即冒険者になれる育成所となっている。  私が受け持つ生徒達は10数名で、大体三パーティが出来る位だ。前衛の子と後衛の子を必ずパーティ編成に入れた上で、余りが加わる形にしている。  入学時に適性検査が有り、後衛向きの子は少ない為に必ず三名はクラスに入れて、多くいる前衛向きの子をクラスに加えて生徒数を合わせる。  男女比は半々だが、前衛は男子、後衛は女子が多い。男子だけのパーティは有り得るが女子だけのパーティになる事はかなり稀だ。  但し、何故か私が受け持つ生徒の多くが女子で、その稀な女子だけのパーティが二組居たりする。私の性別が女なのが関係していないと思いたい。 「先生ー、今日は男子に欠席者が居るから男子だけのパーティは組めませんよね?」  肩身が狭い男子が更に少ない現状、普段なら率先して男子だけで固まっていたパーティが編成出来ずにいた。  女子達が獲物を捉える眼で男子達を見詰めている中、私はため息混じりに答える。 「今日は私が男子のパーティに入る。何時ものパーティで行くぞ」 「ぶー、ぶー」「横暴だー」「職権乱用だー」「ショタコンだー」  喧しい。女子達の非難を無視してダンジョンに入る。ダンジョンアカデミーの生徒は一階層と二階層の二つしか入れないように厳重に監視されている。  小学生の年齢である彼女達は勿論一階層だ。出てくる魔物は単体が多く、パーティで戦闘すれば怪我一つ負わずに完勝出来る。  実際、私が干渉して助けたのは初めてダンジョンに入った日だけだったりする。雑学で学んだ事が実戦になると食い違う事があるので仕方がないが、あっという間に適応して手が掛からない今日この頃。  風邪など滅多にひかなくなった男子が欠席している理由は単に親の都合だったりする。  極力戦闘には参加しない様に、さりとて支援は欠かさず行い、ある程度の連携は取りながらダンジョンに籠る事数刻、事件が起きた。
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