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孤狼を出た。光に満ちた夜の通りを歩く。
通りには中国語の看板が溢れている。英語や日本語の看板は数えるほどしかない。
大気には慢性的な酸性雨が霧となって混じっている。空は汚染されて赤い。俺は生まれてこのかた、星というものを目にしたことがない。
うつむきながら、足元を見て歩く。
黒ずくめのパンクがふたり。目の前に立ち塞がった。背後、同じくふたりのパンクが退路を塞ぐ。
「よう、探偵。何を探ろうってんだ」
パンクが言った。笑っている。目は笑っていない。
ハッキングによって得た増本メテオの脳内データを素早く照合する。
田中ジャック。二十五歳。故買屋。
高倉ジェイキー。二十四歳。偽造屋。
大原ワック。二十四歳。詐欺師。
生駒リック。二十歳。当たり屋。
以上、四人のパンクの情報を確認する。どうやらこいつらは増本メテオの手下らしい。
「探偵。この辺は俺たちの縄張りだ。何かを探りたいんなら、一言ぐらい挨拶して欲しいもんだな」
「生憎だがな。俺は探偵じゃない。留置所で年越ししたくないなら、無駄に強がるのはやめておけ」
「なるほど。刑事か。ここいらは刑事は立ち入り禁止だぜ。覚悟しな」
四人は一斉に拳銃を抜いた。
戦闘用強化義眼が四人の武装状況を瞬時に捉える――ベレッタPX4ストーム。危険度60%。グロック19。危険度60%。FNファイブセブン。危険度85%。デザートイーグル。危険度70%。
戦闘用強化義眼を介した視界にレチクルが浮かび上がる。
光学迷彩装置を緊急作動する。光を複雑に屈折することによって透明化を果たす。生体エナジーに負荷が急激にかかってゆく。強化人工筋肉を最大限に働かせながら、空高く跳躍した。
戦闘用義眼の動体視力を最大にする。さらに生体エナジーに負荷がかかる。弾丸が描く軌道が鮮明に見える。
弾道を意識しながら空中で回転。四人の包囲と攻撃を脱しながら着地した。
体内に埋め込まれた精神力増幅装置――サイコブースターを作動する。
四人のパンクが空中に舞い上がった。予期せぬ事態に混乱している。拳銃を放り投げ、手足をバタつかせる。
「何しやがる。降ろしやがれ」
いちばん元気そうな田中ジャックを地上一メートルまで降下させた。
田中の脳内にアクセス出来ない。田中はオフラインなのだ。田中の脳内にアクセスするためには、彼自身の意思でオンライン脳の状態にしなくてはならない。
俺は官給品のグロック17を抜いた。
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