MPD2100

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「脳をオンラインにしろ」 「やなこった」 「無駄に強がっても法的に不利な立場になるだけだぞ」 「うるせえ。早く降ろしやがれ」 「分からん奴だな」 田中を空中に浮かべたまま高速で回転させてやる。大抵はこれで気持ちが折れる。 「負けたよ。オンラインにすりゃいいんだろ」 回転を止めてやる。 田中を睨む。パスワードを探るのが面倒だ。 「パスワードを言え」 「令状を見せろ」 「そんなものはない」 「ふざけんなよ」 「ふざけてるのはおまえだろう。武器の不法所持で逮捕してもいいんだぞ。留置場で新年を迎えたいのか。いやならパスワードを言え」 「分かったよ。言うよ。パスワードはゴールドラッシュ893。もういいだろ。降ろしてくれ」 空中に浮かべたままの田中の脳内にアクセス――田中は数日間に渡って北条グリーンを尾行監視している。さらに田中の記憶を辿る。田中の過去の行動を時系列に逆行するような形で詳細に把握する。 「田中ジャック、高倉ジェイキー、大原ワック、生駒リック。殺人未遂の現行犯で逮捕する」 「(きたね)えぞポリ公」 四台のパトロールカーが到着。俺もその中の一台に乗った。メトロポリタン警察(MPD)本部に向かう。 マジックミラー越しに取り調べの様子を伺う。取り調べはスムーズに進んでいる。 被疑者の脳内の記憶を辿り、尋問し、脳内に存在する記憶が捏造されたフェイクでないことを立証する――取り調べの大まかな流れだ。 田中を尋問するのは岸田警部補。理論立てて容赦なく攻め立てる。容疑者はたまらない。 取り調べは岸田にまかせておく。重要参考人の増本メテオともう一度接触をはかる。 パトロールカーで再び孤狼へ。 カクテルをシェイクしているのはメテオではない。違うバーテンだ。 「警察だ」 身分証を開いて見せる。 「さっきのバーテンはどこだ」 「さっきのバーテンて誰だ」 赤い髪。ひょろ長い手足。望遠装置付きの義眼の他に目立った改造はない。 「増本メテオ。赤外線暗視装置付きの義眼のあいつだよ」 「ああ、メテオか。もう上がったよ」 「増本メテオの行方を知りたい」 「知るかよ。同じ店で働いてるだけの浅い関係だ。あいつがどこで何をしてようと興味もないね」 睨む。パスワードを探る。 「おいおい。俺の脳内をハッキングしようとしてるな」 「知ってることは素直に話したほうが身のためだぞ」
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