MPD2100

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最前列の増本メテオが立ち上がった。左手の義手を外した。強化セラミック製三十二口径五連装機銃が禍々しい姿を現した。左手の五連装機銃が客席に向いた。 客席は老紳士やら怪紳士らが逃げ惑い、大混乱している。 強烈な連続発射音が内耳を震わした。 逃げ遅れた金持ちたちが銃弾に貫かれてバタバタと倒れてゆく。 ステージ上ではショーケースに覆われた北条グリーンが悲鳴をあげていた。 武装した黒服たちが続々と集結。銃弾が縦横無尽に飛び交った。戦闘用義眼の動体視力を最大にする。銃弾が静止した点線に見える。黒服たちの撃った銃弾が増本メテオの身体を貫いた。増本メテオの赤外線暗視装置付きの義眼が光を失ってゆく。糸が切れたように身体が崩れ去る。 生体エナジーを充分に溜め込んだのを確認。精神力増幅装置――サイコブースターを作動した。 ブーストされた念動力によって、黒服たちが一塊になって空中に舞い上がった。短機関銃が次々と床に落下してゆく。黒服たちがなす術なく空中を回転している。下界では、後ろ暗い秘密を持った金持ちたちが震えていた。 扉が開いた。岸田警部補を先頭に、警官隊が一斉に突入してくる。 「メトロポリタン警察だ。国際人権保護法違反の容疑で全員逮捕する」 逃げ惑う金持ちたちはやがて観念して項垂れ、両手を前に突き出した。 俺は空中で回転し続ける黒服たちを見上げた。 「良く回るなあ。眺めはどうだ?」 「目が回る。降ろしてくれ」 「そうか。もう少し浮かんで回ってろ」 北条グリーンは保護された。他、二十人にも及ぶ少年少女たちが保護された。 「警部。装備品をお返しします」 パトロール警官から拳銃と手錠、そして身分証を受け取った。 「警部、増本メテオが見当たりません」 岸田が首を傾げている。 「メテオは黒服に撃たれて倒れたはずだ」 「確かですか?」 「被弾して倒れるのを見た」 最前列のメテオの席を見て奇妙な点に気づく。あるはずの血痕がない。 「血痕がないな」 岸田と顔を見合わせる。 「さては、防弾人工皮膚か」 「あり得ますね。中国で開発に成功したと聞いてましたが。まさか実用化されていたとは」 「まだ完全ではないはずだ。中国の最新の技術力を持ってしても、顔面や生殖器を防弾人工皮膚には出来ない」 「メテオはどこに消えたんだろう」 「まだ屋内にいるはずだ。建物と周辺地域を封鎖しろ」 「了解――巡査部長、来てくれ」 岸田は部下を呼んだ。俺の指示通り命令している。 精神力増幅装置がエナジーを失った。空中に浮かんでいた黒服たちが次々と落下する。
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