口付け

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口付け

嘘、今、私、英輔くんとキスしてる。英輔くんにあげたくて守ってきた初めて、してるんだ。信じられない、幸せすぎるよ。 「何こんぐらいで顔赤くしてんだよ。あ、もしかしてお前、初めてだったとか?」 私は黙って頷く。 「そうか、悪かったな。こんな形で奪っちまって」 口は悪いのに優しい英輔くん。どうしよう、ますます好きになちゃうよ。 「えっと、嬉しかったです」 「そう、なら良かったけど。せっかくだし歌うか」 それからのことはあまりの幸せで頭がぼやけて覚えていない。 「なあ、また会うか?」 「え、良いんですか。私みたいな冴えない地味めがねと会ったりして」 カラオケの時間が来て駅の前に着くと英輔くんが誘ってくれた。 「そんなに自分を駄目みたいに言うな。お前、自分じゃ気がついてないみたいだけど、可愛いぞ」 英輔くんが頭を優しく撫でてくれた。 「あ、ありがとうございます」 恥ずかしくて英輔くんの顔が見られない。彼は今、どんな顔をしているのだろう。 「そんじゃ、俺は行くから。またな」 「はい」 彼が迎えに来たマネージャーらしき人が運転する車に乗り込む。私はそんな彼を車が見えなくなるまで目で追ってから帰った。
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