口付け

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「お前、とんだ馬鹿野郎だな。自分から辛い道を選ぶなんて。けど、そんなところも嫌いじゃないぜ」 「英輔くん、私はお前じゃないよ。私の名前は未来」 そう言えば英輔くんと会うようになってからも自分の名前を名乗っていないことに気がついた。 「未来だな。覚えた。なあ、未来。好きって言えよ」 暗い英輔くんの車の車内。助手席に座る私に迫ってくる。 どうしよう、また顔が近すぎる。息がしずらくて苦しいよ。胸の高揚感が止まらない。今にも心臓が破裂しちゃいそう。 「あの、英輔くん。顔が近くて恥ずかしいよ」 「恥ずかしがってる未来も良いな」 さらに迫ってくる英輔くんを止めた。 「あの、車の中とは言え、外だよ。こんな所でしたら、英輔くんはアイドルなのに」 私の言葉を聞いた英輔くんは私の両腕を押さえた。 「良いか未来。俺はアイドルである前にただの男だ」 「えっと、その」 緊張して言葉が出ない。英輔くんが唇を重ねてきてめがねがずれる。 「めがね邪魔」 英輔くんにめがねを取られてしまって顔がぼやける。きつく目を閉じ、全てを英輔くんに委ねた。次に目を開けた時にはまるで野生の動物が獲物を襲おうとしているようなそんな表情をしていた。 「なあ、好きって言えよ。俺の事、好きなんだろ」 「英輔くん、えっと、好き」 英輔くんが満足そうに離れていく。私はそんな英輔くんにまた大好きと言った。 ー続くー
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