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海は宇宙よりも神秘的で謎が深い。
深く深く潜ろうとすればするほど謎が深まってくる。
エメラルドグリーンからだんだんサファイアのような深い青が目の前に広がっていく。
カクレクマノミが楽しげに泳いでいたり、海藻がゆらゆらと揺れてたりまるで僕は人魚になったような心地に陥った。
このまま、いやなことぜんぶ忘れてしまいたい。
なにも考えずに海月のようにさ迷いたい。
いや、ちがうな。
海の亡霊として永遠に海の底まで堕ちてしまいたい。
そういえば、僕はどうして海に沈んでいるのだろう。
いや、そんなこと、もう、どうでもいいや。
どぷどぷどぷどぷ。
目の前が真っ暗になってきた。
気付いたら、青く暗い海の底に堕ちていた。
ここは…どこだろう。
そんなことを考えていたら、提灯のような優しい光がみえた。
その光の先には不気味な顔をしたチョウチンアンコウが僕をじっと見つめて『ここは、意識の底じゃよ。』とチョウチンアンコウは僕にそう優しく教えてくれた。
僕はなぜ考えが分かられたんだろうと考え込んでいたら、また考えをチョウチンアンコウに読まれて『お主は悲しき思い出に囚われてここに辿り着いたんじゃよ。』と教えてくれた。
よく分からないけど、受け入れるしかなさそうだ。
でも現実を受け入れたところでとりあえず、どうすればいいんだろう。
チョウチンアンコウは、『”シーラカンスのお茶会”に参加するんじゃ。』といい、僕をどこかに案内した。それが目的のようだった。
その先には、かつて高度な文明を築いただろう都市が浮かんでいた。
チョウチンアンコウは、その海底都市にある古城に入っていった。
傷ついているが、どこかの王族の城を思わせる佇まいのするかつて王だった人が座っていただろうと思われる玉座。
そして、長テーブル。
長テーブルには、皿が置いてあってその上には。
人間の骨が置いてあった。
僕は、背筋が凍った。
深海にいるからだろうか。
だがしかし、どうして僕は深海にいるのだろう。
『それは、お前がもう死んでいるからだよ。』
冷たくて低い声が聞こえた。
その声の主の名は。
『海の掃除屋シーラカンスだ。』
そうぶっきらぼうに言い放った。
今回の人間はどんな悩みを持っていたか。
ふむ、入水自殺をした好きな女を追いたい、か。
恋をするのは結構だが、海を汚されるのは困るな。
マア、今は愛した女と共にテーブルに並んでいるが。
良かったナァ、一緒になれて幸せだよナァ。
テーブルに並んでいる海の亡霊たちは今日もニコニコと微笑んでいた。
真ん中のテーブルには金箔を塗られた髑髏が佇んでいた。
それは、かつての威厳はもうなくなった王だった。
『ナァ、チョウチンアンコウよ。』と老いぼれたチョウチンアンコウに問う。
すると、老いぼれチョウチンアンコウは笑顔で『はい、なんでございましょうか。』という。
『なんで”シーラカンスのお茶会”っていうんだよ。』と問うと、老練たるチョウチンアンコウは『それはですね、そういったほうが貴方様の”お仕事”の力になれると思いまして。』とさっきと変わらない笑顔でいう。
ふん、余計なことを。
だが、たしかに助けにはなっている。
たまには、優雅にお茶会でもするかな。
『それは、素晴らしいアイデアですね。』とチョウチンアンコウがいつもより弾んだ笑顔をみせた。
こいつの思考を読む力はこういうとき厄介だと常々思う。
チョウチンアンコウは俺の考えを気にすることなく、1793Sinceと書かれた赤ワインを割れたグラスに注いだ。
そのワインは仄かに命の味がした。
その味は、とても不味かった。
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