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もう黙ってなどいられない。私は液晶の前で仁王立ちし、両拳を握りしめ、懸命に外界へ出て来ようとする我が子を叱咤激励した。
「いけっ!そうだ!頑張れ!あと少し!おおっ!」
ついに殻を完全に破り、私が産んだ子が姿を現した。黒光りした細長い体、蜂のような触覚、つぶらな二つの黒目、少し黄味がかったコオロギのような六本の逞しい脚、腹には沢山の節が見て取れる。そして立派な鋏が尾端から伸びている。我が子は自身の脚を器用に使い動き始めた。
「そうか、会いたいか。心配するな、今から向かうぞ」
そう言うと私は着の身着のまま玄関を飛び出した。
「うわ、教授!産まれましたよ。ちょっと何というか、かなり気持ち悪い見た目ですね……」
「これはハサミムシに近いかなあ。見た目はそっくりですが、やはりこれだけ大きいと、ハサミムシに近い何かですね。普通地球上にこんなものは存在しませんよ」
「と言いますと?」
「あくまでも仮説ですが、地球外から来た可能性も考えられます。地球上にある物質だけであのような巨体を支え、なおかつ俊敏に動く事は不可能だと思います」
「なるほど」
「あと、もしコイツがハサミムシと似た習性を持つとなると……」
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