生まれて初めて便Pになった中年

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 そんな中年の私にも一つ、自慢出来る事がある。ほぼ毎日快便なのだ。勿論腹が痛くなった事もあるし、ストレスやなんかで軟便になったり下痢気味にもなる。ただ通勤中に急な腹痛に襲われた記憶も無いし、妻の様に便を溜め込む事も無い。ほら見てみろ、このオオサンショウウオのような立派なブツを。流すのが惜しいくらいだ。無論流すが。仮に放っておいたら妻に三行半(みくだりはん)を叩き付けられる羽目になるだろう。ちなみに娘は今年から大学生で一人暮らしを始めた。丁度いい緩衝材(かんしょうざい)のような存在が居なくなった今、出来るだけお互い不快にならない生活を夫婦二人で心がけていく必要がある。  会社での私の評価は可もなく不可もなく、と言った所だろうか。別に怒りっぽい訳じゃないし、部下をいびったりもしない。その代わりもの凄く頼りになる人間でもないので、仕事のアドバイスを聞きに来る後輩なんて居ない。それでもこれといって大きな問題の起きない、平穏無事な生活に私は満足していた。  しかし、ある日を境に少しずつ私の日常が変わり始めた。正確な日は覚えていないが、妻が夕餉(ゆうげ)に刺身を出してくれた時があった。美味い美味いと缶ビール片手に舌鼓を打ったのだが、その次の日の朝の事だ。  便が出ない。
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