生まれて初めて便Pになった中年

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手で尻を押さえ、腰を屈める。トイレのドアノブが自分の頭と同じ高さにある。なぜ腰を屈めるのかはっきりとした理由は分からない。防衛本能だろうか。それともこの姿勢が楽なのだろうか。痛みを直視したくないが為に、浅はかな現実逃避を始めてしまった。頭皮じゃない、逃避だ。今はなぜ屈んでいるかを考えるのではなく、この激痛の根源を絶たねばならぬ。  ハアハアと息も絶え絶えにズボンを下ろし、便座に腰掛けうずくまる。吐き出す息の波も弱々しく震える。中年親父の喘ぎ声程みっともないものは無い。頭がふらふらして来た。全身の血液が腹部に集中しているのだろう。体の細胞全てが協力して、この異物を追い出そうとしてくれている。 「ぬっ、ふああっ」 尻の穴が拡張する。もうすぐ、もうすぐだ。頑張れ、頑張るんだ私。自身を鼓舞する。腹痛は自分との戦いなのだ。途中で諦めればかえって痛みを長引かせてしまう。私はこうやって成長して来た。 にゅるり。 これといった音も無く、外へ出て行った。まあ、あまりにも下品なので普段どういった排出音なのか、具体的に述べるのはここでは控えさせて頂く。
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