生まれて初めて便Pになった中年

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 これは爽やかな風が吹き抜ける五月の事である。私は食パンをかじりながら朝のニュースを見ていた。スズメが外でチュンチュンとさえずっている。 「小型の隕石が南太平洋沖に衝突。ニアミスした漁船が今日無事帰港」 オシャレなのかよく分からない、謎のラインが多数入った服を着た女子アナが話していた。ネットの情報だと、どうやらニアミスと言ってもすぐ脇に落ちた訳ではなく、衝突の衝撃で起きた波が漁船を襲ったらしい。実際航行に大きな支障はなく、漁は滞り無く行われたのだと言う。全く、いつもメディアは大げさに報道する。妻が用意してくれた料理(と言ってもトーストとサラダだが)を食いながら心の中で愚痴を吐く。でも飯を作ってもらえるだけありがたい。私は家事なんてろくすっぽ出来ないからな。そして朝飯を食い終わったらすぐ歯を磨くのが日課だ。私は歯磨き粉は多めに付けるのが好きである。だが口を開けてガシガシ歯を研磨すると、飛沫が飛んで汚いと文句を言われるので控えめにしておく。この口の中がミントの爽快感ときめ細やかな泡で包まれる感じがたまらない。この歳になってくると体のあらゆる穴から出てくる臭いを気にする。せめて口くらいは清潔に保っておきたい。そして日に日に減っていく頭頂部の髪の毛を丁寧にくしで撫でる。ちまたではこの髪型をバーコードと言っているようだが、若者が禿げ上がったらQRコードとでも呼ばれるのだろうか。
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