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「はーい、本日めでたく御夫妻となったふたりのため、あたしと一つ目小僧とで、ごちそうを用意させていただきました。といっても、さちにシチューとコロッケ、サラドの作り方を教わって、作ってみただけですけどねぇ。さちほど上手じゃないと思いますが、どうぞご賞味あれ」
特別に用意された洋式のテーブルの上には、さちがこれまで作ってきたハイカラ料理がずらりと並べられていた。作ったのはさちではないが、さちの思いが込められた料理ばかりだ。
「わぁ、こんなにたくさん! ありがとうございます、おりんさん、一つ目ちゃん!」
「いいんだよ、これでもさちの姐さんだからねぇ」
「あれぇ、さち姐さんのおっかさんのまちがいじゃないんですかい?」
素朴な疑問であったが、おりんによって頭を小突かれる一つ目小僧だった。
「ともあれ、我々の祝言をこうして祝ってくれてありがとう。心から礼を言う。さちとわしは、これからも夫婦として仲良くやっていくつもりだ。何かあったら、また助けてくれると嬉しいぞ」
「皆様、よろしくお願い致します」
さちとぬらりひょんは共に、丁寧に頭を下げた。
「いいんですよぅ、おやびん、さち姐さん。おいらはこれからも、うまいもんが食えたらそれでいいんですぅ」
「おれは酒だな。うまい酒が飲める肴があれば他はいらん」
「頼まれなくったって勝手にやらせてもらいますよ」
祝言と言っても、堅苦しいものは何もない。見知った者たちで賑やかに、和やかに、祝いの席が盛り上がる。
「私、この日を生涯忘れません。何があっても生きていけます」
「そうさな、わしもさちの白無垢姿を目に焼き付けておこう」
二人は互いに手を取ると、共に歩んでいくことを誓い合った。
これはまだ人とあやかしが共に生きていた頃の御話。
あやかしが少しずつ人々から離れていった時代の御話。
時は変われど、生きていく場所は変われど、人もあやかしもまことの心は変わらない。邪悪な心をもつ者もいれば、善良な心をもつ者もいる。
それでも生きていこうではないか。共に笑い合うために──。
了
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