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第一章 はじまりとほくほくコロッケ
あやかしは古来より人と共に生きてきた。人と共存していくことは、あやかしにとって自然な生き方だったのだ。
しかし時は大正時代。
江戸から明治、そして大正へと移り変わっていく中で、時代に取り残される者が存在した。
それはあやかしたちとて同じである。変化を嫌うあやかしたちは、急速に西洋化が進む日本社会についていけなかったのだ。長らく人と共に生きてきたあやかしたちであったが、共存することをあきらめ、幽世へと移り住んでいった。
しかしそんな時代にも、人々と共に生きていこうとする、あやかしも存在した。
人間を好む者、訳あって人間のそばから離れられない者、人間を利用しようとする者、幽世に居場所がない者。理由は様々であった。彼らが人間と共に生きていくには、人々と契約を交わすのが最も手っ取り早い方法であった。
あやかしは長らく生きてきた知恵や妖力を人々に貸し与え、人もまたあやかしに生きていく場所を提供する。両者に喜ばれた関係は婚姻関係である。
あやかしを一族の一員としていくことで家業は繁栄し、子々孫々まで栄えていくのだから、喜んで婚姻関係を結ぶ者もいた。
しかし近代化が進む社会で、あやかしとの婚姻は世の中の誹りを受けかねない。よって人々は秘められた関係として、その婚姻をひた隠しにしたのである。
かくしてあやかしと人の婚姻は、ひそやかに受け継がれていったのである。
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