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第一幕
季節は、春。4月、中学入学の、4月。
見慣れない通学路には桜が散り、道路を桃色に染めた。
周りからは、友達同士の他愛のない会話や、近所のお母様方の世間話が聞こえてくる。
私はというと、読書をしている。正確に言うと、読書をしながら考え事をしている、だろう。
最近のお気に入りは太宰治の『桜桃』。家族の幸福を願いながら、自らの手で崩壊させる苦悩を描いた話である。
乙一の『GOTH』も、まぁ良かった。リストカット事件…とても興味深い。
あぁ、星新一の『幻の星』も良かったな。もともとショートショートが好きなものだから。
他にも、重松清の『舞姫通信』、『君の友達』も良かった。
…読書は、好きだ。
現実であったいろいろなことを考えずにすむ。
その本の主人公になりきれば、もっと本を満喫することができる。
―――その読書ですら、私の心は…私の感情は、動かない。
小学3年生のときに、読書の素晴らしさを知った。
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