おはよう

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「おはよう」 耳元に聞こえる君の声。 可笑しいね。 貴方はここにはいない筈なのに。 瞼を擦りながら重い体を起こす。 やっぱり貴方はどこにもいない。 「ハァ…」 ひとつため息をついてベットから出る。 彼は仕事で出張中。 たった2ヵ月離れるだけ。 彼が家を出るとき 「寂しい?」 なんてふざけて聞いてきたときは 「寂しいわけないじゃない」 なんて強がりを言った。 …それなのにこんなにも寂しいなんて。 日が経つ毎に寂しい気持ちが強くなっていく。 「逢いたいなぁ…」 口にしても叶わないけれど。 誰に言うわけでもないけれど。 どうしても無意識に言葉に出てしまう。 それほどまでに貴方が恋しい。 あぁ、早く帰ってきて。 夜。 一人寂しく夕食を食べる私。 「美味しい」 そう笑顔を向けてくれる貴方はいない。 いつもは楽しい食事も貴方がいないとこんなにもつまらないなんて。 「逢いたいなぁ…」 楽しくはならないけれど。 味も変わらないけれど。 どうしても言いたくなってしまう。 それほどまでに貴方が愛しい。 あぁ、早く笑顔を見せて。 「また寂しい明日が来るのか」 私はため息をひとつついて、ベッドに横になる。 貴方のことを考えると涙が出てしまうの。 私は静かに目を閉じた。 「おはよう」 その声で目が覚める。 「えっ…何で」 目を開けると、出張している筈の貴方の笑顔があった。 「予定より早く仕事が終わって、昨日の深夜に帰ってきちゃったんだ。どうしても君に遭いたくて」 そう言って貴方は私の頬に触れた。 「寂しくなかった?」 そう聞かれた途端、私の目からは大粒の涙が溢れた。 私は思いきり貴方に抱きついた。 「逢いたかったなぁ」 口には出さないけれど。 面と向かって言えないけれど。 どうしても恥ずかしくなってしまう。 それほどまでに貴方が眩しい。 あぁ、早くキスをして。 私は笑顔で貴方に言うの。 「おはよう」
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