外国のマスター

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外国のマスター

家に帰ると母ちゃんが 「この頃 帰り遅いね 彼女でもできたの?」 と言った 「ま そんなとこかな」 俺は  カクテルで 軽く酔っていたし ノブと 盛り上がったで 何となく そう言ってしまった すると母ちゃんは 妙に顔を輝かせて こう言った 「シゲが結婚するなら 私はここ出て 小さいアパートにでも住むよ 私のことは心配することないから」 「ありがと だけどまだ 結婚できるかわからないよ」 俺が たじろいで そう言うと 母ちゃんは 待ってましたとばかり ガンガン 突っ込み入れてきた 「何 言ってるんだ シゲ 43にもなって 結婚する気あるなら ボサボサしてないで 一気に壁ドンだ! ウジウジしてたら 女は嫌気がさす 男は全力で体当たりだ! 必死にチャンス作って 関門突破だ! 今どき できちゃった婚は普通なんだから 私は 応援してるよ」 「いや そんな・・・ ヘタなことすると セクハラで訴えられるから」 俺は さっさと自室にこもり  さっそく 説教部屋へ行く さっき リアルマスターの ノブと話して  恋に気合いは入ったけど 明日の変化球が 思いつかない 今夜は  どんなマスターがいいだろう いっそ外国の人はどうだろう 『Ayham』 『奕辰』 『Rolihlahla』 『CESAR』 どこの国の人か 性別も年齢も不明だ 俺は適当に 『Rolihlahla』の部屋に入る 向こうが朝なのか夜なのか それさえ わからないので 「こんにちは よろしく」 と挨拶する 『あなたに贈る言葉 用意してました』 と マスターは語る 何語かわからないが AIが自動的に通訳しているので 若干 言葉が ぎこちない 「好きな女性に 愛を告白する勇気がない」 と 書き込むと 『勇気は必要ない 幸運の小石 見つけよう』 という  「小石?」 『河原に落ちてる小石 幸運の小石 祈りのエネルギー入れて あなたの幸せ祈ります と 彼女に渡す』 「もし 喜んでもらえなかったら?」 『あなた 悲しい 泣く あなたの涙 小石から流れる 小石 彼女に祈り届ける』 「どこの国の方ですか?」 『あなたの願い 叶える 愛の国 今 すぐ 小石ある 早く河原に行って すぐ近くの河原にある 小石 星を写して光ってる 早く!』 「今?」 『早く 行け』 説教部屋は閉じられた 俺は 何だか 魔法にかけられた気分だったが とりあえず 近くの河原に行ってみた 足元に キラリと光る 小さな 石ころがあった 川の水に濡れて  外灯の光か何かを 反射しているのだろう と 思ったが 部屋に戻り  電気をつけず 手のひらに 小石をのせると ぼんやりと 光って見えた 小指の爪より小さい  白っぽい小石 俺は 何て素直なんだ 説教部屋で言われたことを こんな忠実に守る奴なんて いるだろうか 苦笑しながらも 明日 この小石 何と言って 由香里さんに手渡そう と 考えながら 眠りについた
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