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それから僕は軽く腹を満たし、広間の端で、日本酒を飲み、全体を見渡しながら時間を潰していた。が、これは、時間を消費するという行為ではなく、自分から声をかけるということを、億劫に思っている為であることを自覚し、誰かに声を掛けようと思い立った。どうせなら、自分の知っている人物が良い。いくつか売れた話を書いた人と話してみたかった。
僕は、自分の本棚を頭の中に出現させた。どれか目に着いた本を取り、表紙をめくる。自分の顔をさらすことに抵抗のない、或いは自負している人であれば、大抵そこに顔写真を見ることができる。僕は脳内の書架を漁った。が、それらはどれも欧州の偉人たちであった。
そして、それらは大抵、故人であった。しかして、僕は嘆息を漏らした。ああ、この宴は、この建物は、偽作の館なるかな。誰もかれもが──勿論僕を含め──偉大なる大賢者の模倣犯にしか過ぎない。
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