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定刻五分前の大広間。既に人でごった返し、その空気は汚穢に満ちていた。こういった人混み特有のよどんだ空気感は、活気に関係なく苦手だ。僕は再び頭痛を覚えて、こめかみに手をやった。部屋が暑いのでのぼせてもいるのだろう。
やはり僕の脳は、暗愚と侮蔑の思索的シケへと、自殺的な舵取りをしてしまう。この痛々しき脳で思考するに、この空間はまさに「偽作の地球」であった。広間が平面的であることも、それを助長しているのだろう。
昔、この世界──すなわち僕たちが棲息しているこの惑星のことだが──が球体であることを述べた哲学者もとい、科学者は自身の命が危ぶまれたことと、対照的に考えてみると、この空間の着飾った人々は、聖職者や陪審員の類に形容することが可能であろう。殊に、この空間の主賓などは、統治者の類ともいえるだろう。
しかしながら、これはあくまでも無為たる抽象化に過ぎず、一銭にもならぬ思考である。僕は職業柄か、はたまた生来の悪癖かこの手の妄想が酷いのだ。付け加えると、今日は作家が集められたパーティーであることも、僕の思索が一層めまぐるしく動くことの要因たり得る。
こういった取り留めのないことを考えているうちに、定刻を迎えた。広間の前方で、司会を担当するとみられる四十代半ば程の男が、無線で音響に接続されたマイクの先端を軽く叩き、テストをしていた。その男は、マイクが正常に機能していることを確認すると、次のような口上をした。
「今日は文藝会にお集まりいただき誠にありがとうございます。お食事を楽しみながら、文化的な会話を弾ませ、親睦を深めていきましょう──
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