戸園瑞香

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 安堵のため息を漏らす。先ほどまで暖かかったからだが、急速に冷えたようだった。家に一人きり、と言うのは、何年経っても慣れないものだった。いつも背後を気にして過ごしている。こんな生活が何年も続くとなると、流石に疲れる。ここ何日か咳も続いている。今日はゆっくり休もう。そう思って目を閉じる。  咳が出た。やけに喉が痛い。痛い、と言うよりかは、猛烈に熱い。痛い、熱い、熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。喉を掻きむしる。伸びた爪により皮が剥げ、血が滲んだ。  しばらく苦闘した後、何かが切れたかのように喉を掻く手を止める。白目を向いており、手が痙攣していた。震える口から、舌を出す。そして、思いきり口を閉じた。湯に赤い塊が浮かぶ。出血は致死量に達して、私は事切れた。
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