第一幕

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第一幕

 瑞香は死んだ。  警察と救急隊員が辿り着いた頃にはもう、死後六時間を越えていて。直接の死因となったのは、出血の量だろうと予測されている。風呂に溜められた水が余すとこなく赤く染まる程の出血だった。喉の傷跡と、爪に付着した血肉、また、自ら舌を噛みきっていることから、警察は自殺、事件性はないと判断した。  七月✕日、瑞香の葬式が開かれる。  数え切れない程の友人が、瑞香のために涙を流している。 「瑞香ぁ、なん、で、どうして…っ?!幸せだったじゃない!私たち、幸せだったのに、なんで、なんで…!!」  半狂乱になって棺にしがみつく様は、とても痛々しかった。とうてい大丈夫とは言えない状態の母の背中を父がさすっている。  そんな会場の中に、見慣れた人物を見つける。その人は、喪服であるセーラー服の裾を握りしめ、顔を青くしていた。睦見奈々子。それが彼女の名前だ。生前、瑞香と一番仲の良かった友人である。  何故、彼女は死んだ?  
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