第一幕

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『彼女が死ぬなんて有り得ない。』  会場にいる大勢が考えていることを、奈々子は感じとる。  それでも、棺に納められた青白い顔を見ていると、彼女はもうこの世に存在しないのだと痛感する。 「…君は、瑞香の友人かな…?」  低い声が、私を呼び止めた。  振り向くと、背の高い男が一人、奈々子を見つめている。目の下には黒い隈があるため、瑞香が死んでから寝れないのだろうな、と考える。が、 「失礼ですが、どなたですか?」  その顔に見覚えはなかった。 「俺…僕は瑞香の恋人です。…元、って言った方がいいのかな…」  自分で自分の発言を訂正しながら、目に涙を浮かべた。恋人…そういえば瑞香から『素敵な彼氏がいる』とは聞いたことがあった。それは多分、この人であっているだろう。
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