戸園瑞香

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戸園瑞香

 シャワーの音が響いた。鼻歌混じりの声が微かに漏れてくる。私は今、一人だった。両親は共働きで家におらず、だいたいの夜はいつも、私はは家に一人きりになるのだ。淋しさを紛らわす為に、歌を口ずさむ。それはいつしか、癖になってしまっていた。  キュ、と音がして、シャワーが止む。背後に気配を感じ、振り向いた。当然のごとく、誰もいない。自嘲の笑みを浮かべ、湯船に足をいれた。からだが暖かさに包まれる。  そんな中、誰かの視線を感じ取った。おかしい。ここは窓もなく、覗けるような場所は換気扇か風呂の入り口しかない。が、今、家には私一人だ。扉もオートロックであるため、誰かが侵入した、と言うこともない。  まさか、換気扇?疑問、と言うよりかは恐怖を覚え、恐る恐る上を見上げる。見えるのは、何かの布の切れ端だけだ。異様に赤い。が、それもきっと、この前換気扇を掃除したときについたものだろう。ただの思い過ごしだったようだ。
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