微睡みの植物園

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 しばしば、決まってある夢を見る。朝、目覚める直前、微睡(まどろ)みの中でしか行けない場所。夢の中の植物園だ。 ガラス張りの建物の中は、空気が澄んでいて明るい。何百とある四角い透明なプランターは整然と並んでいる。それぞれのプランターに植えられている植物は一本だけ。濃緑の茎が(いただ)く、雪のように白い、ふくよかに膨らんだ花。|棘のある葉が幾重にも重なった青緑色の多肉植物。くるくると渦を巻き、放射状に広がる太い(つる)。どれも現実の世界では見たことがない。ひとつひとつをよく見ようと、プランターに近づくも、歩みを進めるたびに植物園の光景は薄れていく。 気がつけば、見慣れた天井をはっきりと視認している自分がいる。寝転びながらぼんやりと思う。いつかまた、あの植物園に。今度こそ、不思議な植物たちに囲まれた空間を堪能したい、と。
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