波紋

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恋人、秋月昴が俳優に転身し半年。 元より素質があったためか、瞬く間に売れっ子になった。 今では舞台に映画にドラマ…時折入るバラエティに忙しい日々を送っている。 (もうそろそろ1ヶ月近く会っていない…。 最近会ったのは、年明けに一度顔を合わせただけだ) 定期的な連絡は、…ラインは、空き時間にくれる。 けれどもタイミングが合わず、声すら聞けてないのが現状で。 元気でやっているのかな…とふと思う。 仕事に夢中になるのはいいけど。 夢中になりすぎて、寝食を忘れてしまうことがあるから。 (悔しいけどそんな少年みたいなところも好きで…。) 学生時代の演劇部でも彼のファンはいたけど、今とは比べものにならない。 あの時は、自分も裏方でそばにいられたからこんな気持ちにはならなかった。 …ほんの少し自負があった。 他の部員の誰より演劇のことに詳しくて彼の力になれると。 でもわたしの持つ知識は、すべて過去のものだ。 今、彼を取り巻くのは、すべてがプロの人達。 今のわたしは、彼には必要ない。 寂しがってはいけないよね…。 あんな奇跡みたいなことがあった後に不満や、不安に思っちゃいけない。 本当の自分を取り戻して、 水を得た魚のように生き生きしている彼の重荷にはなりたくない。 そう思うのに…なのに水面の波紋みたいに不安が広がるの。 ねぇ、今もわたしのこと…好き? わたしが必要…? 会いたいのは、わたしだけじゃ…ないよね?
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