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波紋
節分が終わり、バレンタインに賑わう2月。
チョコレートの催事やチラシをあちこちで目にする今日。
ストリートビジョンからも、チョコレートのCMが流れる。
「君がチョコレートに何を求めているのか知らないけど…」
「こっちに来るなら覚悟して。この深い味は、人を選ぶから」
囁く台詞は、今をときめく人気俳優の二人。
CMに足を止め、顔を上げる女性たち。
北川深月もその中の一人だった。
「カッコいいよねぇーーー。秋月昴」
「イケメンだよね。アタシは、梶原司派だけど♡」
「わかるわかる。セクシーだもん♪」
見蕩れる声が聞こえてくる。
通り過ぎてゆく彼女らを尻目に深月は薄く笑みを浮かべた。
よく晴れた日曜の午後。
書店販売員の深月が街を歩くことは滅多にない。
今日は、出席した結婚式の帰り。
普段より華やかな姿の深月に気づく者は誰もいない。
-----はずだった。
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