プロローグ      任官  1913年 秋

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 大回りになる外側のミハイルの馬の歩度(ほど)が大きく伸びるが、馬の並びも崩さず足並みも乱さず、整然と列をなした騎兵隊列(きへいたいれつ)が庁舎の中庭へ入っていった。  中庭の円形広場のある中央まで来ると、ようやく騎兵の列は脚の運びを(ゆる)める。  前触れもなく、騎兵列が入ってきた気配に庁舎(ちょうしゃ)の建物の窓から、黒い制服の官吏(かんり)が、物珍しそうに中庭の広場を覗き込んでいた。 「デミトフ少尉、私のことはお気になさらないように。こんな我がままを言って何かあっても、全部私のせいです。ただ家を離れてみたかったのです。それと同年代の方とお話しをしたいと思って。ご迷惑をかけて、皆さんには申し訳ないと思っています」 「い、いいえ」  
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