プロローグ      任官  1913年 秋

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 自分はいったい誰と話をしているのだろう。  本来なら口を利くことなどありえない高貴な身分の方だというのに。 「ところで、少尉(しょうい)はどうして士官になられたの?」 「ど、どうして、ですか。やはりロシア帝国と皇帝陛下を守り……」 「ふふ、大義名分(たいぎめいぶん)はよろしいので、本音をおっしゃっていただけます? 特別扱いを受けられるとか、勲章が欲しいとか、名誉が欲しいとか。そういうのです」 「は?」 「今回、私は新たに着任される方について注文を出しました。馬が好きな方。馬が上手な方をと。そうしたら、皆さん、そうでしょうと言われました。それで若い方をと」 「自分も馬は好きです。子どもの頃から」 「可愛いわよね。頭もいいし」 「はい」
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