プロローグ      任官  1913年 秋

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「で、少尉はどうして士官になられたの?」 「あの、殿下は、自分が士官になった本当の理由を、お聞きになりたいのでしょうか」 「そうです」  優しく微笑(ほほえ)んでいる。 「殿下は、ご存じでいらっしゃるかもしれませんが、デミトフ家は代々貴族将校の家系です。」  デミトフ家は、父も腹違(はらちが)いの兄二人も、皆、将校だ。祖父も露土戦争に将校として従軍していた。 「つまり、それ以外、選ばせてもらえなかったんでしょう?」 「そうですね。そういうことになるかと存じます」 「では、もし貴族軍人の家じゃなかったら、何をなさりたかったのかしら?」
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