81人が本棚に入れています
本棚に追加
「そして、いつか母の選んだ人のところへ嫁がされる。本当はずっと、ここに、この国にいたいのに。でも、それも叶わないでしょうね。抗うか、諦めるか。選択肢は二つ。でも私は母に逆らえない。だとしたら私は全てを諦めるべきしかないの」
おそらく、オリガ大公女殿下は皇后陛下と違い、皇族としての責務を自覚しておられるのだ。
個人の願望より、優先すべきことがあるということを。――
ミハイルの胸は痛んだ。
「デミトフ少尉。あなたの願いもいつか叶いますように。少なくとも、少尉は私よりは自由だと思いますから。ここで生きていくことしかできない私と違って」
それは慰めるような慈愛に満ち、心に沁みる笑顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!