第二章 第五話    モスクワの雪 1918年 秋

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「お付き合いしている方とモスクワにいることになったので、知り合いもいないし、時々でいいから遊びに来ていいかって」  チヨは少し微笑んでいる。むしろ旧知の友人に久しぶりに会ったかのようだ。リーザはウラジオストク時代に、ようやく探し出した読み書きのできるお手伝いさんだった。 「遊びに来るってか?」 「ええ。今は雇うことはできませんから」 「そりゃ雇えないだろ。それより、どうしてリーザがここを知ってるんだ?」 「故郷に着いたら、手紙を書きますって言われたから教えたの」 「何か企んでないか? 今まで食いもんを勝手に持って行ってたし。もうこっちだって食いもんもまともにないだからさ」 「あら、逆にキャベツとハムを分けてもらったのよ」 「キャベツ? ハム?」 「その恋人が農村出身なんですって」 「まったく、キャベツなんかにつられて、おふくろは」 だが奥からは、スープのいい匂いが漂っていた。キッチンからリーザが顔を出した。 「お食事用意しますね、同志たち」 「同志……? なんだそりゃ? まあ、雇ってないしな」  リーザが再びキッチンへ引っ込むのを見て 「大丈夫なのか。以前、いろいろ面倒な感じだっただろ」  ミハイルがアナトリーに問いかけた。
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