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と、いうか、それを言いに来たのか。
いや、返しに来たのか「燃えよ剣」を。
で、すぐ書いてくれか。すぐに影響されちゃうのか。まったくミーハーだな。愛いやつめ。
肩甲骨をごきりと伸ばす。
「やれやれ、七竈ちゃんは土方歳三の十戒も知らないのか」
ぱっと目がこちらに向けられる。興味津々の顔である。
「歴史小説ファンなら基本なんだけどな。
土方歳三を主人公に書くなら、守るべき十戒というものが存在するんだ。
壬生寺に取材に行かねばならないとか、五稜郭の地図をそらで描けないといけないとかね。
で、最後にして絶対の戒めが厳しいんだよ。
執筆時は司馬遼太郎の没年齢を超えていなくてはならない。
こればっかりはいかんともしがたいね。俺はまだ18なんだからさ」
……また、無意味に嘘をついてしまったな。
「え、厳しすぎるよ。先生は絶対に書けないじゃない」
絶対72歳までに死ぬみたいに言うな。
「先生は明日をも知れぬ身なのに」
助けた命を明日死なすな。
あっさり興味が消える。本のページ直し作業に戻られる。いや助かるよ? 助かるけどさ。
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