必要殺人事件

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「いや、ミステリだよ? 一番売れるジャンルだ。しかも読者の期待がすごいんだぞ」 「ふーん」  視線すらこない。 「七竈ちゃん、もっと俺自身にもに興味を持とう。俺を愛そう。俺も君を愛してるから」 「僕が先生を愛さなくちゃいけないんなら、先生は僕を愛さなくていいよ」  ふむ。このイケメン16歳が言うと様になる。  本棚を軽々どかす恵まれた体躯。左目を医療用眼帯で隠し、その上にさらに眼鏡をかけても際立つ華やかな美貌。今日もスーツ姿だ。私服ほぼないらしい。  様になる。なるからそういう趣味の人に言ってくれ。傷心の俺に言うな。 「読者からの挑戦状がきてるんだぞ」  固まった体をそろそろ動かし、別の本棚の引き出しを開ける。  地下室の利点。すべての壁際に本棚が置ける。 「ほら」  一枚の茶封筒。  宛名面の「読者からの挑戦状コーナー様」を隠して開く。  コピー用紙に鉛筆書き。 『わたしをさがしにきてください  洗濯物とゴジラのすきま  いきをひそめてまっています』 「なにこれ」  七竈ちゃんが、眉をひそめる。 「暗号だよ。小学2年生の女の子から届いた暗号。急ぎ解読しなくちゃいけない」
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