必要殺人事件

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 賢明な子だ。そういう風に生きている子どもは、通常は助けなんてもとめない。助からない状態しか知らないからだ。  しかし俺たちの方は、逮捕なんてされないと知っていた。  七竈ちゃんは正義感が強い。知っているから彼女の自宅に駆けつけ、両親の首を刎ね飛ばした。  詳細は省く。とかく、七竈納は人を殺せる。  別の問題は増えたろうが、助けることには成功したわけだ。 「けどさあ七竈ちゃん。やっぱり暴力はよくないぜ」  七竈納は首をかしげる。 「殺すのが一番早くて、抜本的解決じゃない」  正しい意見だ。息を潜めて待っている間に、人間はどんどんすり減っていく。  泥棒が部屋を荒らしている間隠れていても、まったく平静でいてしまうほどに。  見知らぬ子どものSOSをチラリと見て、殺人を決行してしまうほどに。 「そうさ。だからだよ、七竈ちゃん。暴力ってのは万能なんだ」  届いたメールの文字列を眺める。 『おもしろくはあったんですけどね。最初にお伝えした通り、あの作品を掲載するのは賭けだったんですよ。賭けに負けたんです、逃げるしかありません』  視線を七竈ちゃんに向ける。白刃一閃で首を刎ねる少年に向ける。
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