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その日の昼間、インターホンが鳴った。
女性の一人暮らしで、インターホンはなかなか警戒に値する。オートロックのある部屋にしたかったが、大学合格が決まったのがぎりぎりで部屋を選べなかったことが災いしていた。
まさか優奈だろうか、という考えが頭をよぎったが、彼女が来る場合は必ず事前に連絡がある。スマホを見て、特に連絡が来ていないことを確認すると、こっそりと玄関扉へ向かった。のぞき穴で見て知人でなければ無視する。両親と決めたルールを改めて思い返し、意を決して穴を覗いてみる。
「……うそでしょ」
知人でなければ無視する。
知っている人間でも無視して構わないだろうか?
そこには、スーパーのレジ袋をぶら下げた久坂孝史郎の姿があった。
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