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鼻歌交じりの司に案内されて、なつめは大学のキャンパス内にあるカフェにやってきた。入学して間もないので、こんな場所があることも知らなかった。店内が良く見える大きな窓、白のテーブルに、プランターからあふれんばかりの赤いペチュニアが華やかで、街中にあるようなカフェと変わらない。
昼休みなので学生たちでごったがえしていたが、どうにか司が二人分の席を確保してくれる。司は見かけによらず大食いらしく、ランチセットを軽く二人分平らげていた。その様子を見ているだけでお腹がいっぱいになりそうだ。
その間も、なつめは指輪のことが気になって仕方がなかった。おそらく、なつめが思ったとおり、あれは部室に落ちていたのだろう。それはいい。しかし、司はなぜなつめの持ち物だとわかったのだろう。孝史郎や優奈に聞いて違ったからなつめのものだと判断したのだろうか。その割には、なつめのものに違いないと確信しているような言い方だった。
「気になるって顔、してるね」
司は悪戯好きな子供のような顔をしていた。まただ。また見透かされてしまった。
「気には、なります」
「返してほしいよね?」
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