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「久坂君ってさあ、高校のころ、それなりに女の子に人気あったんだよ。二年で生徒会の副会長だから、結構目立ってたっていうのもあるけど。でも、どんな女の子からのお誘いも、ぜーんぶお断り。普通、可愛い子に告白されたらちょっと付き合ってみるとかする年頃なのに、本当に、全然、まったく何にもなかったからさ。俺たち生徒会のメンバーにとっては、学校の七不思議みたいになってたんだ」
なつめは相槌を打つことも忘れて、食後の紅茶を飲んでいた。高校時代から好かれていたという話は初めて聞いた。それも当然か。おとなしいから目立たないだけで、誠実で優しいのは昔から変わらない。生徒会の役員として人前に出るきっかけがあれば、異性に好かれない方がおかしいのだ。
「だから、その久坂君が執着する女の子って、よっぽどいい子なんだろうなあと思って。俺はすごく君に興味があったわけ」
「はあ」
「なつめちゃんもさ、ちょっと想像してみてよ。めちゃくちゃ美人の友達が誰とも付き合わないで、昔別れた恋人のこと忘れられなくてイケメンを袖にしまくってるって聞いたら、そのイケメンがどんな奴か、気になるでしょ?」
「まあ、確かに」
「でしょ?」
「和泉さんみたいに、デートに誘ってみようとは、思わないですけど」
「そこは性格の相違だね」
そう言われれば、そうかもしれないと思ってしまう。司に乗せられているような気もするが、あまり気にしても仕方がないと割り切ることにした。
「そう言うなつめちゃんは、どうしてオッケーしてくれたの?」
「和泉さんは私のこと、なんとも思ってないから」
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