お願いだから帰ってください

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お願いだから帰ってください

 大学に入学して、最初のゴールデンウィークがやってきた。それと同時に、なつめは高熱を出して倒れた。  うんざりした。高校のころも、確か中学のころもそうだった。新たな生活が始まって少ししたころの連休、つまりゴールデンウィークになると、決まって体調を崩す。授業を休むわけにはいかないと、体ががんばっているのだろうか。そんなに優等生めいた考え方をしているつもりはないのだが。  優奈(ゆうな)を始めとした英米文学の一年生のメンバーで小旅行に出かける予定だったが、キャンセルせざるを得ない。自分の体調の傾向は分かっていてなお、今年こそは大丈夫であってほしいという願いを込めて予定を入れたのに。神は残酷である。なつめは力の入らない体を無理やり起こして、電話をかけた。 「ほんっとにごめん。私の分の宿のキャンセル料、立て替えといてくれない? 休み明けに払うから」 『それはいいけど……なっちゃん一人だよね? 大丈夫?』 「気にしないで。ただの風邪だから、寝てれば平気」 『でも、急に悪くなっても誰も助けてくれないじゃん。ねえ、やっぱり私、行こうか』 「だめだめ! 絶対来ないで。優奈まで旅行キャンセルになったら、私申し訳なくて死んじゃう。そんなことよりお土産買って来て。ね?」  なつめのことを気にしている優奈を半ば無理やり説き伏せて、電話を切る。脱力してベッドに転がり、ため息をついた。  部屋に一人だ、という実感が湧く。そんなことは、この新生活が始まってから当然のことだったのに、弱るとどうしてもだめだ。普段気にならないようなことが、気になってしまう。  寝よう。幸い、体調が悪くていくらでも眠れる状態だ。なつめはベッドに潜り込んで目を閉じた。
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